The last dance






アリス祭最終日の後夜祭。 そのイベントにはとてもロマンチックな伝説がある。



「伝説とかモテない男子には関係ねーよなー」



そう言って苦笑するのは悪友のメガネ。

だよな、と相槌をうつ。

「毎年ラストダンス踊ってるのに両思いにならないお前と、毎年相手がいない俺、どっちが不幸かな?」

「・・てめぇ」

メガネの頭を叩くとポカッと良い音がした。



中等部1年の秋。

今日はその後夜祭で、2人は礼装をして人混みの中で話をしていた。



と、言っても翼はただの暇つぶし。

ダンスのパートナーの美咲が来るのを待っているのだ。

女の支度は時間が掛かる・・と前におっさん、いや殿が言っていたような気がする。



「翼!」



後ろから聞こえた声に気付いて振り返ると、

人混みをかきわけてこちらに走ってくる美咲を見つけた。

「美咲・・・っ!?」

翼の表情が変わった。



「そっか今年からドレス変わるんだっけ?」

少し紅くなっている翼を横目でチラリと盗み見して、ニヤリとしたメガネが美咲に聞く。

「2人も変わってんじゃん。ねえ翼!」



初等部と中等部では女子のドレスと男子の礼装が違う。

そうだった、変わるんだったと思い出したときにはもう遅い。



「じゃーん!似合うか?」



そう言いながら少し回って見せる美咲。

初等部のころのドレスも似合っていたが、今のドレスもよく似合っている。

頭にのせた花の輪、大人っぽさの中に可愛らしさが出ているドレスのデザイン。

何を言うべきか迷って視線をそらす。



するとメガネが美咲を褒めてから用事があると言ってどこかへ去っていった。

毎年、美咲がくると翼と2人っきりにするためにメガネはどこかへ行ってしまう。

翼の肩をポンッと叩いて「まあ、がんばれ」と伝えてから。



「翼、何ぼーっとしてんだよ」

「えっああ何だ?」

「ドレス変わったから感想聞いてんの!何だよその顔・・似合ってないのか?」



むっとした表情になった美咲。

こんな表情も可愛いと思う俺はおかしいのか?

え、おかしい?・・仕方ねーだろ可愛いんだから。



「すっげー似合ってる」



これが精一杯の感想。



「ありがと翼・・腹減ったからごちそう食べに行こう!」



良かった言えて――って、おい。

この雰囲気で飯!?

やっぱり綺麗なドレスを着ていても美咲は美咲だ。

翼は溜め息をついた。



「何溜め息ついてんだよ?早く行かないとごちそう無くなるだろ!」

溜め息ついてるのはお前のせいだ!





美咲が首に手を回して引っ張ると自然と翼の手が美咲の腰へ。

自分の方へと引き寄せる。

(・・細っ)



こいつちゃんと飯食ってんのか?



そんな疑問は、その後ごちそうを食べまくる美咲を見て綺麗さっぱりと消えた。

何を今更意識してんだ俺は。



衣装が変わったからか、少し大人になったからか

今年の後夜祭はいつもと違う。



毎年踊っているラストダンス。

そしてあの伝説。



”ラストダンスを踊った者同士が結ばれる”



何故か今年はこの伝説をいつもより意識してしまう。



「翼、行くぞ!」

「おうっ」

ラストダンスの伝説。

くだらないと思っていても、



心の奥では叶って欲しいと密かに願っている特別なもの。





特別な人への思いをのせて

――ラストダンスがもうすぐ始まる。



                        【END】

あとがき

7777hitを踏んでくださった霖さんのリク「翼美咲小説」です。

霖さんのみ保存OKです。

2人といえばラストダンス!

あの2人はダンス好きですねー・・あ、クリスマスパーティーも(笑

中1にしたのは蜜柑曰く「かわいいーーっっvアンド セクシー」な美咲先輩に

デレデレな翼先輩が書きたかったんです(おい

本当にデレデレですね・・あはは。






7777番ゲットしたのでリクエストさせていただきました。
リクエストしすぎですみませんっ(汗
2人はきっとラストダンス伝説の通りになりますよね。
いや、なるはずだっ!!(…)
素敵な小説ありがとうございました!


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