記憶の中へ

結果は分かっていた筈だった。
しかしいざ目の前に突き付けられた現実は思った以上に深く心に突き刺さる。
何だか堪らなくなって無理矢理に笑顔を取り繕うと、ごめん、と呟きその場から足早に立ち去った。
と言うより逃げた、と言う表現の方が正しいのかも知れない。


どれ位走ったか分からない。
ただ先程から脳内を駆け巡る思いに走った息苦しさが加わり余計に辛くて。
適当な建物の影で立ち止まった。
目に映る景色も今だけは色を失っているように感じられた。
午後の予鈴と共に生徒達が校舎に向けて歩き出す。
足を動かす気力すらなくて、このまま授業はサボろうかなんて考えていた。

息を整えながらさっきのことをまた思い出す。
いつだって彼の隣にはあの子がいて、敵わないなんて承知の事実で。
あの子はきっとあたしに比べれば何十倍もの時間を彼と一緒に過ごしてきたのだろう。
何かと鈍感なあたしでも彼のあの子に対する気持ちにはすぐに気付くことができた。
2人が仮に、彼氏彼女の関係になったとしても反対する者はいないだろうと思う。
むしろ今付き合っていないこと自体が不思議な位で。

それでも心の何処かで期待していたのかもしれない。
そんな根拠のない期待は何処から湧いてきたのか分からないけれど。
あるいは自分の気持ちにけりをつけたかったのだろうか。
近頃よく付き合うとか別れたとか、そういう類のことをよく耳にするようになった。
その度にそんな気持ちが本物なのか疑わしくて。
そんな会話はもう聞き飽きたけれど。
前に友達に短期間に何人もの人と付き合うのと、1人の人とずっと付き合うのがどっちが良いかと尋ねられたことを思い出した。
その時は分からなかったけれど、もし今同じ質問をされたら迷わず後者を選ぶだろう。
それほどまでにあたしの中で彼の存在は大きかった。
しかしそんな感情は今ではもう意味を為さなくなった。

遥か上空の空はどこまでも青く澄み渡っていて、あたしは想いを振り切ろうと再び歩き出した。






今回は第三者目線ってことで書いてみました。
なんか短かったですね;苦笑
深い文章書ける人って尊敬する。
書けるようになりたいなー。


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