In the past

出逢った日のことは今でもはっきりと覚えている。
それまで俺は縛られた生活に意味など見出せず、毎日逃げる方法ばかり考えていた。
それはいつだって変わらないはずだった、けれど…。



あの日の空はまだ冬だという割に穏やかで。
室内に籠っているのも何だか勿体なくなって、意味もなくぶらぶらと立ち歩いていた。
他の生徒達は校庭で昼寝をしたり、また俺と同じく立ち歩いていたりと思い思いの時間を過ごしていて。

突然、かさりと木の葉が擦れる音がした。
頭上を見上げると視界の中に捉えたのは真っ赤なゴム風船、とそれを掴もうと手を伸ばす淡い桃色の髪の少女。
俺達が出逢った瞬間だった。
だが美咲の細い指が風船の紐を掴んだその時、彼女はバランスを崩してしまった。
何と言うか、突然のことで見過ごすことができなかったというか。
俺は咄嗟にその影を踏み、体が地面に叩きつけられる数センチ手前でその動きはぴたりと止まった。
ほっと胸を撫で下ろした。
同時にあいつが驚いてこちらを見ているのが分かって。
ありがと、お前のアリスすごいな、そう言ってその表情は笑顔に変わった。

俺はアリスを誉められたことも、これほどまでに屈託のない笑顔を見たのも初めてで。
心臓の鼓動が次第に速まるのがわかって。
あの日俺は初めてこの学園で生きていく理由を見つけた。
俺達はそれから毎日一緒に過ごして、他愛のない話をした。
互いに対してはいつだって素でいることができて。
気が付けば隣にいるのが当たり前になっていた。
今思えば、出逢ったあの時からもうあいつに惹かれていたのかもしれない。



気が付けばいつの間にか太陽は沈んでいて、辺りは闇に包まれようとしている。
いつになく様々な想いが頭の中を回って離れようとしなかった。
やがて冴えていた筈の意識はうとうとと浅い眠りに落ちはじめていった、が。

「つばさー、数学の問題集写させろよ」

眠りは一瞬にして妨げられた。
自分以外居ない筈の部屋に突然あいつが現れたものだからどきりとした。
昔からあいつは本当に遠慮と言う言葉を知らないというか。
こんな関係でいられるのは嬉しくも悲しくもあるけれど。

「仕方ねーな、ったくー」
「ありがと、助かった!」

飾り気のない笑顔はあの日と変わることなく向けられた。
その笑顔を見て俺はまたどきりとして。

「そういや翼、運命って信じる?」

美咲が課題を写すペンの動きを止め思い出したように口にした。

「どうしたんだよ美咲さん急に」
「いや、どうなのかなと思ってさ」

何だそれ、と少し笑いながら言う。
時刻は午後8時を回ろうとしていた。
窓の外には薄明るい電灯が3つ4つ見える。
暫しの沈黙の後、美咲が再び手を止めて口を開いた。

「あたしは信じるよ」
「何で?」
「だってさ、アリスに生まれてなかったら今頃全く違う生活してた訳だし」
「アリスに生まれたこと自体運命って事だろ」
「そうそう。」

そう考えれば俺達が出会ったことも運命なんじゃないかと思えた。
そんなことこっ恥ずかしくて口にはできないけれど。
それに生まれた年が違えば同じ学園内にいても他人のままだったのかも知れない。
そう考えるのは少し寂しい。

「俺も、信じることにする」

再びの沈黙の後そう答えた。






キャラ崩壊しまくり&捏造しまくりですみませんっ(土下座
風船は親からもらったやつで、いつかはしぼむって分かってたけど大切で、ってイメージ。
美咲の髪の色ってピンクと茶色どっちなんだろう。
あたし的にはピンクなんですが原作は茶色なんですよねー。
なんか過去小説の難しさを実感しました。
語彙が乏しい、な…orz
時間かけすぎな割にあららーな出来ですがもう思い切ってアップします。苦笑


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